この夏、何回か福島に行き、オオムラサキを見たり、エゴヒゲナガゾウムシの産卵を観察した。クロタマムシやヤマトタマムシもブンブン飛んでいた。
1番多く見られた虫はアカボシゴマダラ。人為的に持ち込まれたものらしいけど大繁栄してる。同じエノキに住むオオムラサキが数を減らさないか心配だ。
カメノコハムシの幼虫は糞や脱け殻を身に付けて身を守るものが多い。
特に、ベニカメノコハムシの幼虫は長い毛のようなものを付けている。よく見ると、毛が付いた脱け殻が重なっているようだ。これを数えると、この写真の幼虫は3~4令と分かる。
この毛はどのように出来るのか、仮説を立ててみた。
糞を毛の先に付けて伸ばしていく為には、自分の体以上に長い肛門が必要になるため、これは現実的ではない気がする。
金魚の糞のように肛門にぶら下げて、長く伸ばしてから背中に移植するんじゃないだろうか。
きっと、幼虫を見れば、肛門で糞を伸ばしている個体がいるに違いない。
ということで、小さい幼虫を一匹一匹確認すると、やはり肛門で毛を作っている最中のものがいた。
ボヤけた写真で申し訳ないけど、肛門から毛が伸びているのが見えると思う。
孵化したばかりの幼虫は、きっと毛が1本だけなのかもしれない。これを見たくて探したが、既に何本か毛を生やしたものばかり。
いつか見てみたい。
カメノコハムシはとても興味深い。
ベニカメノコハムシの黒い模様は、まるで塗装をしたかのようにくっきりと描かれている。この模様はいつどのように現れるのか気になっていた。
飼育中の幼虫が蛹になったので、羽化の様子を観察することにした。スマホにあるタイムラプスのアプリで撮影開始。
まずは蛹。
そして羽化。5分くらいでスルッと出てくる。この時点では全く模様がない。
羽化後40分が経過。模様が浮かび上がってくる。おー、これはすごい。この時点ではまだ透明感がある。
羽化後1時間もすると、真っ黒な模様が現れた。無地からこんなはっきりした模様が現れるのは不思議だ。
ここから綺麗な紅色になるまで、かなりの日数が必要とのことで、越冬中の個体も赤くないという話もある。1週間前に羽化した個体は、未だに黄色いまま。無事に越冬成功したら、真っ赤に染まる様子を観察していきたい。どうやって越冬するんだろ…。
飼育していて感心したけど、このハムシは茎に卵を産む。わざわざ茎に捕まり産卵する様子はとても可愛い。葉より茎の方がしっかりしているし目立たないため、産卵場所として相応しいということかも。その努力も虚しく、生息数が少ない虫だ。
岩手旅行、2日目。
北上山地の高原を歩き、針葉樹にスジコガネがいるのを確認。もしかしてキンスジコガネが紛れているかも、とスウィーピングしていくが、スジコガネしか網に入らない。
疲れたのでルッキングに切り替えるが、針葉樹の新芽や実がコガネムシに見えて紛らわしい。コガネムシはこれらに擬態しているということか、と納得。
コガネムシの影を確認して網を振ると、スジコガネと一緒にフタコブルリハナカミキリが入っていた。予期せぬ出会いに大満足。今日はもう切り上げよう。シボ加工をしたようなシワに深みのある瑠璃色が素敵。
車に戻る途中、適当にハルニレを網で掬うと、エサキキンヘリタマムシの雌が採れた。雌はあまり見たことが無かったので嬉しい。
この辺はセダカオサムシもいそうだ。北海道では何度か見たけど、遠く離れた岩手にも分布しているのはロマンを感じる。探しながら歩くが、簡単に見つかる相手ではなく空振り。
岩手にもう1泊しようかと悩むが、車中泊は暑いし、下山してホテルまで行くのも面倒だし、仙台に帰ることにした。
途中で昨日捕まえたベニカメノコハムシの食草であるミヤマヤブタバコを10本採る。バケツに水を張り入れていたが、すぐに萎れてきた。
慌てて北上市のホームセンターに寄り、プランターと土を購入して植えた。そのプランター専用の防虫ネットも売っていたので併せて購入。
これが優れもので、ハムシの脱走を防止できるし、葉やハムシを狙う害虫や鳥も防ぐことができる。これからのハムシ飼育はこれで決まりだ。ハムシの飼育キットとして販売した方が売れるんじゃないかな。ナナフシにも良さそうだ。ラベル張り替えて転売しようかな。
メッシュの径が1~2ミリと大きいので、孵化したばかりの幼虫は逃げるかもしれない。ベニカメノコハムシの場合は逃げても我が家の周辺に定着できるとは思えないが、地域の生態系を乱さぬように気を付けないと。
岩手に来た。
4日間の予定だったが、初日は発熱し寝込んでしまった。
残り3日ということで、駆け足で北上山地の各所に移動し、良いところがあれば歩いて虫を探す。
鹿が沢山いるので、これは北海道同様にダイコクコガネがいるに違いない、と探したが見つからない。
ダイコクは諦め、ベニカメノコハムシでもいないかとミヤマヤブタバコを確認していくが、いるのはヨモギハムシばかり。ヨモギハムシもヤブタバコを食べるようだ。
ゼフィルスが多く、綺麗だなぁと眺めていると日が傾いてきた。
暗くなる前にもうひと頑張りしようと、少し標高を上げて探すと、網目状に食べられているヤブタバコの群落を発見。
脱け殻や糞をウニの棘のように体にくっつけた幼虫が沢山いるのを確認し、一人で「いたっ!」と叫ぶ。
幼虫はいるのに、成虫がなかなか見つからない。辺りがほの暗くなってきた時、ようやく真っ赤な成虫を発見。また一人で「いたっ!」と言ったように思う。想像以上に赤くて綺麗。色合いが漆器のようだ。
その後、羽化後間もない黄色の成虫も発見。これも綺麗だ。
その群落にかなりの数がいたので生息数は意外に多いのかと思ったが、他の群落には全くいないか、もしくは少しいるのみ。この差は何だろうか。
成虫と幼虫を数匹持ち帰り、飼育観察してみることにした。ハムシ達の累代飼育には自信がある。
夜中、対向車がハザードをつけてパッシングをするので減速すると、道の真ん中にニホンジカが倒れていた。脚がピクピク動いているので、まだ息はあるようだ。
車を邪魔にならない所に停め、道路緊急ダイヤルに電話するとすぐに向かうとのこと。電話した後、鹿がどうやって回収されるのか見たくなり現場に戻ると、鹿がいない!
どうやら、気絶していただけのようだ。
その後、再び電話してお騒がせしましたと、お騒がせした張本人の鹿に代わり謝っといた。
さて、残り2日、明日は高原に行こう。
10日間ほど、北海道の山に籠ってきた。
目的はダイコクコガネと、道南に住む青いハッカハムシを見ること。
まずはずっと憧れていたダイコクコガネを探しに海沿いの山を登る。
動物のうんちの中を調べても出てくるのは大量のマグソコガネとオオセンチコガネばかり。あー、臭い。
うんちの下に穴があったので、もしかしてと思い掘り進めるとゴホンダイコクコガネのペアがいた。仙台にもいるが、ちょっと嬉しい。
同じ仲間だからこの探し方でいいだろうと、うんち付近の穴を探しては掘るが、見つかるのはゴホンダイコクばかり。うんちの臭いも気にならず、手に付いても平気になってきた。
歩いていると、うんちが無い所にもこんもりと土が盛られているのが目につく。ミミズかモグラかと思ってスルーしてたけど、一応スコップで土をめくってみた。
すると、そこにダイコクコガネの雄が現れた。期待してなかったからびっくり。黒光りし、鎧を纏ったようなボディ。とてもカッコいい虫だ。ダイコクの糞はとても長いとは聞いてたけど、その長~い糞もしっかり確認できた。
動物のうんちが地上になかったのは、ダイコクが全て地下に運んだからと思われる。地下にはうんちの塊があった。
そこから似たような所を探し、最終的には10匹くらい見つけただろうか。その中から大きくて元気がいい2ペアを飼育のため持ち帰ることにした。
今は我が家でホームセンターで買った牛糞の肥料を水で練って与えてる。一応、地下に運ぶので食べてくれてはいるようだが、これで繁殖できるのか不安。犬のうんちでも与えてみようかと悩むところだ。(8/13追記。結局、堆肥だけで飼育するのは無理だった)
途中、観光で寄った鹿の生息密度が高い場所でもダイコクコガネの痕跡が多く見られた。保護区域だったので掘って確認した訳ではないが、北海道は牧場や野生動物が多いので、ダイコクは広く分布していると思われる。当然、野生動物に依存しているマダニも多く、次から次へと這い上がってくる。
その後は支笏湖近辺でオオルリオサムシを探したが、猛暑と乾燥でカタツムリやマイマイカブリすら少なく、札幌岳で雄を1匹だけ捕獲。
色も形も綺麗な昆虫だ。
お次は道南で青いハッカハムシを探す。結局、山にいる間は見れず、諦めて下山して立ち寄ったアイスクリーム屋の庭に普通にいた。今までの苦労は何だったのか。
ほんとに青い!とニヤニヤしながら写真を撮っていたら、他のお客さんも寄ってきた。綺麗な虫だねと言うから、この地域だけ青いんですよと力説したが、そこまで興味無さそう。少し恥ずかしい。
写真では分かり難いけど、ラメ入りの濃いブルーに、水玉模様が浮かび美しい。これも日本で一番綺麗な虫の一つだと思う。色だけじゃなく、模様も素敵。
美笛峠から西側の広範囲でクマイザサが開花していた。そこから、せたな町の手前くらいまでで咲いていることを確認。ここで次に咲くのは60年後。死ぬまでにもう1度見れたら良いが、難しいだろう。しっかりと目に焼き付けた。